『江の川の環境問題を考えるシンポジウム』レポート

 12月14日、広島県三次市の県立歴史民俗資料館において、江の川流域6漁協主催の「江の川の環境問題を考えるシンポジウム」が行われました。江の川は広島県内の中国山地を源流とし、島根県の日本海側に流れ込む中国地方の大河川の一つです。昔よりアユが有名で、今回のシンポジウムも減り続けているアユをどう呼び戻すかがメインテーマでした。この江の川にもブラックバスは生息しており、知る人ぞ知るリバーバッシングのフィールドでもあります。そんなこともあり、FB'sひろしまメンバーからは荒木、山崎の2名(徳政は所用により不参加)、そして53Pick Upなど、普段から一緒に活動してくれているヒロTさん、Nobさん、Takeさん、ヌーチー親分さん、キャメルさんの7名で参加してきました。

 今回のシンポジウムは、まずは広島県内水面漁連専務理事の村上恭祥氏による基調講演。要旨をまとめましたのでご覧下さい。


基調講演(広島県内水面漁連専務理事:村上恭祥氏)

 漁協の方々と話をしていて、最近もっとも多い言葉は「アユが全然取れんようになったが、どうしてじゃろうか」ということのように思う。その後に必ず「天然遡上がのうなったからじゃろうか」、「放流鮎が弱くなったからじゃろうか」、「冷水病で死んでしもうたんじゃろうか」、「川が悪くなったからじゃろう」と付け加えられる。
 確かに獲れなくなったのは皆が実感していることなのだが、ではどれくらい獲れなくなったのか。昭和49年より、継続的にアユの「放流量」、「漁獲量」、「倍率(漁獲量/放流量)」をまとめた資料がある。これによると、昭和49年から放流量というのは増え続けている。ところが、漁獲量というのは途中までは増え続けているが、ここ最近は落ち続けている。「倍率」とは、放流したアユが獲られた時にどれだけ成長しているかを示しているのだが、これは昭和49年より一環して下がり続けている。「アユを放流しても獲れんようになったよのう」という言葉は、この資料からも十分実感できる。その原因として、「ブラックバスが食ってしもうた」、「川鵜が食ってしもうた」、「冷水病で死んでしもうた」ということを言う方がいるが、昭和49年頃、それらはいなかった。ブラックバスにしても川鵜にしても、それらの問題もあることはあるが、長い目で見ると要因はそれだけではなさそうである。

 アユだけでなく、コイ、フナ、ウナギ、マスも同様の資料があるが、これらもアユと同じ経過をたどっている。つまり、獲れなくなったのはアユだけでなく、他の魚についてもなのである。
 昭和49年、50年頃、アユというのは、漁獲した時、放流時の14倍くらいの重さがあった。しかし、これも年々右肩下がりとなり、平成14年には4倍を切っている。これは川でアユが育ってないということを表している。
 江の川流域にもダムは建設されているが、昭和53年に起こった大旱魃によって、水を貯めるシステムが一変してしまった。それまでは梅雨の雨を期待して冬にはそのまま水を放出していたのだが、梅雨時期に雨が降らなかったことで、それ以後は冬の間に水を貯めるようになったのである。それに加え、昭和47年には大豪雨の災害があり、以後10年ほどは河川改修の工事がずっと行われていた。その頃、アユの漁獲高も大きく落ち込んだ。平成になってからも、漁獲高が大きく落ち込んでいる。冷夏、長雨、旱魃、暖冬の繰り返しも、その一因である。
 江の川は天然遡上に支えられている面もある。幸か不幸か、(中流域に)浜原ダムが建設されて以来、天然遡上のアユが統計資料として調査されている。そこからは、もともと天然遡上の量というのは、年によって大きく変動する。つまり、放流しなくても天然遡上があることは、ありがたいことはありがたいのであるが、それに頼っているわけではない。江の川で放流されている量が230〜250万匹ということからも、放流に依存してアユ漁業が継続されてきたと考えてよい。ましてや、他の天然遡上のない河川においては100%放流に頼っているわけで、それらの河川でも漁獲高が減っているということは、河が変わってしまったということ以外には考えられない。

 漁師さんとの話の中で「最近、川のコケが厚うなったり、歩いたあとが濁ることが多くなった」というボヤキをよく聞く。河川改修が原因と考えられるが、この河川改修は冬の間に行われることが多い。冬は漁師が漁に出ないからというのがその理由かと思うが、冬というのは雨が少ない季節でもある。当然、川も水量が少ない。水量が少ない上に工事をするから、余計に泥をためることになっている。近年は暖冬であるため、雪もあまり降らない。昔は春先の雪解けの時期に大水が出て、その水が川を洗っていたのであるが、それも期待できない。つまり、アユを放流する頃になっても、その泥が石の上に分厚いコケのようになって残ってしまう。河川改修により、川は人間には優しくなったが、アユと漁師には厳しくなったということだ。
 昔は大水の後、川の石が洗われて白くなることがよくあった。この白くなるという現象はアユ漁にとっても重要で、放流前に大水が出て石が白くなっていた年はアユも豊漁であったという。1回洗われた後に出る新しいコケには栄養分が豊富に含まれているからだ。こういったことから考えても、雪解け、梅雨時、台風のシーズンの大水というのは非常に重要なのである。
 しかし、ここ10年くらい、そんなことはない。現状はというと、川が洗われることがないために放流時期から川にコケが豊富にある。飽食の状態であるから、アユ同士が縄張り争いをせず、群れている。当然、成長も悪く、大水でも来ようものならその流れに逆らえず、一気に下流まで流されてしまうのである。
 今年は中小河川ではアユ漁は好調だったようだ。しかし、江の川をはじめ、大河川の、それも本流は不調であった。これはダム建設に関係があるように思う。大河川というのは至る所にダムが作られ、川自体が管理されてしまっている。今年はよく雨が降ったが、それでも大水が出ることはなかった。
 環境が変われば、それに合わせてアユの行動も当然変わる。人間だけが昔ながらの方法で漁を続けていくのは、これからは難しいのではないか。最近は天然溯上を誘発するため、あえて親魚を放流し、それに卵を産ませる試みも採られはじめたようだ。
 また、漁業関係者だけでなく、地域の方々、治水、利水の関係者の方々と力を合わせながら、これからの河川環境を綺麗にしていかなければならないのではと思う。



 その後、江の川流域6漁協の方、前出の村上氏、そして地元地方紙「中国新聞」の北村浩司記者を交えたパネルディスカッションが行われました。上流域から下流域まで、漁協の方が共通して持っておられた認識は、「環境悪化がアユを減らした」ということ。環境を取り戻すため、ゴミ拾い、下水道整備、学校教育の中の環境学習等が提案されました。
 ここで私たちが注目したのは、パネルディスカッションに参加されていた中国新聞の北村浩司記者の発言。「以前はカヌーイストと川漁師がよくトラブルになっていた(現在はゾーニングされており、トラブルはないそうです)。でもカヌーイストも漁師さんも川を愛している気持ちは同じ。なんとかこれからの運動で連携していってほしい」との趣旨でした。これは私たちバスフィッシング愛好者にしても同じだと思います。綺麗なフィールドで釣りをしたい。そして、そこにいる元気な魚を釣りたいのですから。
 
 このシンポジウムが開催されると知ったとき、アユがメインということもあり、正直、「『バス害魚論』が展開されるのでは」と危惧しました。しかし、川に関わっておられる方の認識は「川自体」の環境悪化ということです。北村記者の発言のように、どんな形であれ、関わっていればそのフィールドを愛する気持ちは同じ。むやみに対立し、重箱の隅をつつくような議論はしたくありません。これからは「対立」ではなく、「対話」が重要であると思います。立場は違えど、一緒に行動できることは多々あります。このシンポジウムも、今後は毎年行われるようです。私たちも参加し続けると同時に、実際のフィールドでの活動も協力していきたいと考えます。

(報告者:FB'sひろしま 山崎 敬史)

"The Future of Bassing" presented by FB's Society / since May 21, 2002