『ブラックバス問題を考えるVol.3「外来魚と日本」 』レポート

 去る2月23日(土)PM1:00より立教大学で行われました、『ブラックバス問題を考えるVol.3「外来魚と日本」 』(共催:立教大学ウエルネス研究所、生物多様性研究会)についてご報告します。昨年の公開討論会『「ブラックバスを考える」〜21世紀の水辺環境と釣りのありかた〜』は2000人を超える出席者がいたとも言われていますが、今回は少し寂しく150〜200人くらいの参加者でした。


基調講演
「日本の自然は日本の魚と共に歩む」   内山 節(哲学者)

 氏は群馬県上野村に2軒目の家を建てられ、現在はこちらをメインに生活されているとのこと。昔は放流魚は狙わず、ネイティブがなかなか釣れなくなってしまった今は、放流ポイントからできるだけ離れた場所の渓魚を狙うという無類の渓流釣りファンである氏は、この上野村での生活を通して渓流釣り師の目から、今の日本人に失われたもの、自然と人との関わりについてお話された。
 上野村の川も昔に比べて魚が減ったそうだ。減ればヤマメ、イワナは放流するが、その他の魚、ギギやシマドジョウ、カジカはめっきり減ったという。かつては寒バヤ漁のように半職漁師を支えるほど魚が捕れたのに、今は捕れなくなった。村の人たちや彼らの生活と深く関わっていた「魚」が、いつしか都会から来た人に占領され、スポーツフィッシングの対象魚のみが放流されてきた。
 なぜこうなったかについて氏は、(1)河川の環境の悪化、(2)魚との共存という生活スタイルから、魚は「商品」に変わってしまったことを挙げられました。魚はいつしか観光資源になり、それがさらに客を呼び、そしてまた放流が行われる....。このサイクルが「自分の釣りたいところに魚を放流する」という発想に繋がり、こういった考え方が今のバスの密放流にも関わっているのではないか、と持論を話された。


現場報告(1) 「防釣鉄線を張った沼〜環境省RDBリスト絶滅危惧I類のトンボを守る〜」
柄澤保彦(野田自然保護連合会幹事;日本蜻蛉学会会員)

 日本日本蜻蛉学会会員で、千葉県野田市で自然保護活動をされている野田自然保護連合会の幹事でもある柄澤保彦氏からは、バサ−である僕にとって衝撃的なお話をされた。
 氏らは、現在、野田市の利根川近くにある通称「はきだし沼」で、環境省RDBリスト絶滅危惧I類の「オオスジトンボ」の保護活動をされている。この「はきだし沼」は周囲400mほどの小さな池で、かつて船形野池群と呼ばれた農業用溜池の一つ。利根川から伏流した湧き水と水田からの差し水を水源とし、一年を通して豊かな水量と上等な水質を保ち続けてきた池である。この池の環境は10年間悪化しておらず、先の「オオスジトンボ」ほか30種類ものトンボ類を氏らは確認しているとのこと。
 この「はきだし沼」周辺の池にどんどんバスの生息が確認されていき、バサ−の残すゴミ、踏み荒らされる葦、残される釣り糸やルアー、どんどんと荒れ果てていく池を見て、氏らはこのトンボ天国「はきだし沼」をなんとしても守ろうと、1998年から「防釣鉄線張り」を開始した。写真を見せていただいたが、どこからどう見ても「ここは釣りをしてはいけない」という景観であるのに、2001年4月28日、バスの生息が確認されている。沼の保全活動が開始された後に放流された事は間違い無く、こんなところにまでバスを入れる必要があるのか?と、さすがの僕も憤りを感じずにはいられなかった。
 現在はこの「はきだし沼」でバスの駆除を進めていくとのことでしたが、豊かな生物層の源になっている水草を傷つけるわけにはいかないので水抜きはできず、網だとモツゴやフナ、ヨシノボリなども入ってしまい、駆除法法については暗中模索中だそうである。
 こういった沼や池が全国に、数多く存在しているかと思うと、正直、バサ−の一人として恥ずかしい。こういった例は、もっともっとみんなに知って欲しいと感じた。


現場報告(2) 「開放水域と閉鎖水域におけるブラックバスの食性比較」
中川雅博(近畿大学農学部)

 中川氏からは、琵琶湖を例に挙げた「開放水域でのバスの食性」、そして三重県の小さな溜め池(15m×10m×水深0.5m)を例に挙げた「閉鎖水域でのバスの食性」について、自身の調査結果をご報告していただいた。
 まず琵琶湖の報告。琵琶湖は豊富な食物相を呈し、バス本来の食性が解るのではないかという観点から調査に入ったと氏は言う。調査は琵琶湖北湖で行われ、投網によって採取された167個体のバスのうち、約3/4の個体から餌生物が取り出された。その内訳は、混食でみると魚類のみ28%、魚類+甲殻類24%、甲殻類38%、甲殻類+昆虫5%、水生昆虫2%、その他(ワームや水草)3%であった。魚類と甲殻類の2種に対する高い依存性が認められた。その中でも特に、小型で遊泳力の乏しいハゼ科魚類とスジエビの被食率が高かった。また氏は、「バスに補食されたハゼ科個体の抱卵数」を、バスの腹から出したハゼから顕微鏡でカウントした卵数で調査した結果も添えた。これによると、バスは産卵の為に接岸した在来種を親ごと食べるので、一般に「ブルーギルはエッグイータ−だからバスよりも悪い」という評価に対し、「バスは魚卵生魚類が与えうる影響も内在したフィッシュイータ−だ」と結論付けた。
 続いて三重県の小さな溜め池での報告。この池で採取したバス12個体で、胃および腸の内容物を調査。その内訳は水性昆虫67%、水生昆虫+ザリガニ8%で、消化が進行し同定ができなかった17%を除く全ての個体がヤゴ・マツモムシなどの水生昆虫を捕食していた。また、複数の個体では餌生物が十分に消化されずに腸管から見つかったことから、バスは水生昆虫を効率良く摂取することはできず、しばしば言われる「バスは生息場所の餌資源に合わせて嗜好性を変える事ができるオポチュニストである」可能性は低いと氏は話していた。


現場報告(3)「秋田県も淡水魚達の危機」   三村治男(秋田淡水魚研究会)

 三村氏は秋田県田沢湖町に在住されている画家で、「秋田淡水魚研究会」に所属されている。この「秋田淡水魚研究会」は秋田県の水辺に生息する淡水魚類、水生昆虫などの調査・研究を行い、秋田の豊かな自然を楽しみながら保全活動を行う事を趣旨に、平成12年4月から活動を開始している。
 氏はまず秋田県全域で、現在、どのくらいバスの生息域が拡大して来ているかについて話され、自身らの駆除活動について報告された。その内容はホームページ 「美しき水の郷あきた」(http://www.pref.akita.jp/fpd/index.html)で紹介されている。


業界の対応、行政の対応
足立倫行(生物多様性研究会)
中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館主任研究員)
丸山隆(東京水産大学、内水面外来魚管理対策等検討委員会座長)
以上、パネリスト

 バス問題を解決していくうえでの法的整備の必要性について足立氏が触れられた。この問題に関わってくる環境省、農林水産庁、国土交通省の担当者の方々にこのシンポジウムへの出席依頼と外来魚問題への「対応策と今後の方向性」についてのコメントを求め、その回答について報告がなされた。三省庁とも、「新生物多様性国家戦略」を作成中であり、それに及ぼす影響を懸念して今回のシンポジウムへの出席は控えたとのことであったが、生物多様性研究会からの質問についての回答は頂けたとのこと。質問は5つ、詳細な内容は追って生物多様性研究会公式サイト(http://www.ne.jp/asahi/iwana-club/smoc/bio-home.html)で公開するとし、今回は簡単な報告であった。
 本題に入る前に「生物多様性国家戦略」について足立氏より確認がなされた。平成4年の地球サミット開催にあわせて気候変動枠組条約とともに生物多様性条約が採択され、生物多様性条約は平成5年12月に発効、日本は同年18番目の締結国として条約を締結した。その5年後、現在、見直しとして「新生物多様性国家戦略」を作成中であり、本年2002年1月に素案が取りまとめられ、国民の意見を組み入れるためのパブリックコメント手続を実施しています(募集期間:2月18日(月)〜3月11日(月))。従って今回のシンポジウムで出た意見を集約して、生物多様性研究会のパブリックコメントに反映させ、発信することが確認された。
 先の質問5項目は非常に長いものもあるので、簡単にまとめると以下のようになるそうである。

 (1)移入種全般にに対する各省庁の基本的な考え
 (2)外来魚の現状の認識について
 (3)「ゾーニング」に対する考え方について
 (4)今後の取り組みに対してどうか
 (5)関係他省庁との協力について

 (5)については、「新生物多様性国家戦略」などを通して環境省が中心的な役割を果たすとの回答を得ているそうなので、足立氏は(1)〜(4)の質問の回答について簡単に報告された。
 まず水産庁は、漁業に対する被害というものを最優先に考え、全国46都道府県で漁業調整規則でバス・ギルを含む外来魚の放流を禁止し、その方面での対策についてのコメントについてのみ報告された。
 環境省の方は遺伝子資源の保護など、文字どおり生物多様性の面からの対策を考えているものの、予算という面での問題が残されており、駆除予算6900万円を奄美のシロウサギ保護のためのマングースの駆除に当てており、当面はこの活動を最優先に行うとのこと。
 国土交通省は、外来魚問題に対して明確な姿勢を取っており、平成10年に「外来種影響対策研究会」を作り、さらに河川における「外来魚対策案」を作って外来魚に対し基本的に反対の姿勢をとっているとのことであった。
 続いて足立氏はこれら行政の対応について丸山氏、中井氏にコメントを求めた(各省庁からの回答書はパネリストの手元にある)。
 内水面外来魚管理対策等検討委員会座長でもある丸山氏は、まず水産庁の回答について次のようにコメントされた。
 バスなどの外来魚に対し、基本的に「駆除」の姿勢を取っていた水産庁が、2000年に入って「棲みわけ」を提唱した。それを内水面外来魚管理対策等検討委員会で取り上げたところ、ほとんど賛成を得られない状況であったが、現在でも水産庁はこの「棲みわけ案」を撤回することなく、チャンスがあれば支持を得たいとしている。水産庁の姿勢としては漁業被害を防ぐ事を最大の目的とし、(1)在来の漁業資源が捕食されることを最小限に抑えたい、(2)バスそのものを漁業資源にして被害そのものを無くす、という方針であるとのこと。
 続いて中井氏は環境省の回答および「生物多様性国家戦略」についてコメントされた。
 最初に「生物多様性国家戦略」が出された1995年頃は、まだそれほど外来種問題はクローズアップされていなかった。現在の外来魚問題が深刻化してきた状況もあってか、今年出された「新生物多様性国家戦略素案」は前回よりも踏み込んだ形にはなっている。しかし、これはまだ「外から入って来たものは排除する」ための必要最小限なものにしかなっていないと中井氏は指摘した。「環境悪化に伴い減少していく在来種を更に追い込む」、「在来の魚たちとは仲良くできない」ということが明らかであるからこそ、これほどまでにブラックバス問題が大きくなったのだと指摘された。ならばだれがこの在来種を守るのか?という観点に立った時、あくまでも有用魚種を守る姿勢の水産庁と、これに対し「水の中の事は水産庁」という姿勢の環境省の現状こそが大きな問題点だと指摘した後、中井氏は環境省に対してもっと踏み込んだ対応を望むコメントをされた。
 足立氏は次に、漁業権魚種認定の問題について触れた。現在、芦ノ湖、河口湖、山中湖、西湖の4つの湖がバスの第5種漁業権魚種認定を受けており、来年度中に行われようとしている「免許の書き換え」時にさらに認定湖が増える可能性があることを指摘され、生物多様性研究会としてはなんとしてもこれを阻止したいとし、丸山氏、中井氏それぞれにコメントを求めた。
 丸山氏は、全国内水面魚連がアンケートを用いて各地の漁協に対しバスの魚種認定意志について調査した結果、10何ケ所の漁協から希望が出たが、「それでは困る」ということで再度、聞き直したところ、「アンケートの意を取り違えた」ということで正式に意志表明した漁協は現在のところゼロだとのこと。ただ、今後、絶対に出ないとは言えないとのこと。
 次に足立氏は中井氏に対し、現在、学校教育でも盛んであるビオト−プ作りと、バイオマニュピレーションのような人為的な生態系操作における外来種問題ついて質問された。
 中井氏はまずバイオマニュピレーションの問題について解説された。外来種を使って生態系システムを管理して行く手法の是非については、まずこの中においても外来種がなぜこのように問題視されているかということから考えてみたい。まず一つには、例えばその種の導入により水質が良くなるなどの積極的に利用したい目的があって行われるものですが、実際には生き物は予想もしない反応を示すもので、やってみたら予想もしなかったことが起こりうる。そういう意味で、いわゆるある特定の機能だけに注目するあまり、副作用について配慮されていないことが懸念される。例えばブラックバスは釣って楽しいというメリットばかりが先走り、その害性については目を向けられなかった。予想するのが難しい、好ましく無い影響が起こる可能性が全く否定できず、こういった外来種の利用は慎重に考えるべきであると述べられた。ビオトープについても、成長が早く一年間という短い期間で成長する外来種を、教育の現場で利用される事が少なく無い。例えば魚だったらメダカ(外来の)を使い、成長から産卵、孵化までを観察できる教材として使われている。ビオトープは管理がしやすいので、(外来種は)しっかり管理する事が重要だということを学んで欲しい。便利さだけを利用して欲しくないと述べられた。
 足立氏はまとめとして、漁業権魚種の件、ビオトープ、バイオマニュピレーションについては、基調講演内山氏も指摘された根本的に我々の中にある、楽しければ良い、束の間に子供達が喜べば良い、地域の方が儲かれば良いという理由から外来種を利用しても良いという考えが強く、生体系保全、在来種の保護などに対して鈍感になっているのではないか。それを法制度的に言えば、ペットや愛玩動植物に対する輸入制限が甘いことに対して指摘をしたい。新たに「生物多様性国家戦略」を打ち出すならば、この辺りを解決するべきだと述べられた。(つまり入り口を塞がなければ意味が無いという事)
 また丸山氏は、昔は唯一の釣り雑誌であった「水の趣味」では昭和27年頃、「面白さに走るだけではいけない」といった現在の議論とほとんど同じ内容が掲載されていたとお話された。全ては漁業のため、水産のためという水産関係の法律は、水産行政が国民に根ざすものではなく漁業のみを対象にしたものであること、よって生態系保全という言葉は全く出ないし、水産行政の中で遊漁者は漁業を邪魔する者か漁業者が経営する遊漁場のお客さんでしかないこと、またそういった水産行政、水産庁に対し「水の中の事は水産庁に任せる」とする環境省の姿勢に疑問を投げかけた。国土省は非常に言葉ではきれいな事を言うが、丸山氏に言わせるとハゼ釣りしかしたことが無い人が、「私は真鯛を釣ってみせる!」と言っているようなもので、志は認めるができるようになってから言って欲しいと、国土省の外来魚問題に対する姿勢を痛烈に批判した。
 中井氏は最後に、話題と少しずれるかもしれないという前提で、自身の考えについて述べた。日本人の国民性かもしれないが、「縁起でもない」という「この先起こりうる良く無い事は考えない」といった思想が、これほどまでに外来魚問題を根付かる原因になっているのではないかと指摘された。ただ最近少しそういったことが変わってきたなと感じる事は、大規模な公共事業、開発事業がことごとく見直されてきたこと、開発によって破壊が懸念された金銭価値に代えられないような生態系を守ろうとする時流に対しては大きく期待したいと述べられた。


討論〜ゾーニングは実現可能か?〜:
多田実(生物多様性研究会)
鹿熊つとむ(生物多様性研究会)
中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館主任研究員)
丸山隆(東京水産大学、内水面外来魚管理対策等検討委員会座長)
以上、パネリスト
司会 濁川孝志(立教大学ウエルネス研究所)

 会場の出席者とともに議論をするという前提のもと、「ゾーニングは実現可能か?」というテーマで討論が行われた。
 まず生多研の鹿熊氏はゾーニングに対する生多研の考えについて述べられた。結論はいくつかの理由から「ゾーニングはできない」、釣り自体を規制する術はないが「バス釣りは禁止」という方針である事を述べられた。その理由としては、「生物多様性の理念に反する」、「候補地とされている溜め池やダム(いわゆる二流の自然)も貴重な水域である」、「駆除する池がはっきりしない」、「駆除する際の釣り人の具体的な協力方法、資金などがはっきりしない」、「子どもの教育の為にならない」、「バス産業を認めるとこれが既成事実になる」、「釣り人は駆除に協力するのか」などを挙げられた。つまり生多研の考えるこれからのバス釣りは、バスやブルーギルは日本の生態系にとって駆除していくべき「侵入種」であり、この共通理念の上でしか存在し得ない、「駆除」に協力するならばバス釣りをしていただいても構わないと考え、駆除も協力しない、リリースも禁止しないというならば我々はバス釣りを認めないと強く発言された。
 毛ばりを使う伝統的な手法、アユのどぶ釣りをされている会場からの発言者A氏は、どぶ釣りをしていると時折、掛ったアユを狙うバスがいて、こういう現象がいたるところで起こっていると述べられた。また釣れるアユも減少しており、明らかにバスの影響では無いかと考えているそうである。一体誰が放流したのか全く解らない状況の中では、「ゾーニング」など到底不可能では無いかと考えていると発言された。
 アユ釣りの話から起因して、昨年11月に滋賀県で開催された「第9回世界湖沼会議」内で「在来淡水魚が日本の水辺の文化を担ってきた」というテーマで発表され、今回のシンポジウムの資料集の中にも掲載されたということで、司会の濁川氏は多田氏に対して発言を求めた。
 これを受けて多田氏は、釣りの文化とブラックバスのゾーニングについて述べた。まず、先の発言者A氏の発言にもあったアユのどぶ釣りについて触れられた。数千種にもおよぶ多様なパターンを持つアユの毛ばりや釣り方、そしてタナゴ釣りの文化などにも触れ、これらが日本の伝統の釣り文化の一つであること、それゆえの希少性があり、これらを育んで来た日本の環境、在来種を守るべきだと述べられた。ゾーニングについては、川にまで及んだスモールマウスバスの問題に触れ、スモールマウスバスの問題を例にすると、ゾーニングをする前にこれ以上の拡散をまず防ぐべきであると述べられた。また、バスは大正時代から芦ノ湖のみで生息していて、そもそもゾーニングされていた状況であったことを例に出し、70年代にあっと言う間に拡散された状況と、富山で逮捕された密放流を行った釣り人が河口湖からバスを移植したように、一つ生息域を認めればまた広がる可能性は否定できない事を指摘された。
 続いて会場からは、ゾーニング後の釣り場のバスの餌の供給についてB氏から発言された。B氏はゾーニングが仮に完成した場合、バス釣り場の餌の確保のために今まで市場価値の無かった在来の小魚に新たに市場価値が産まれ、乱獲が進む恐れが無いかと指摘された。これを受けて丸山氏は、最初から飼育されているバスならば人口飼料でも差し支えないが、日釣振が指すようなゾーニングの場合は各地に散らばったバスを集めるということだから、野生化したバスを人口飼料で餌付けすることはまず難しく、移植先の小魚、ベイトフィッシュへの影響は避けられない。従って個人的には不自然な湖ができあがるものと考えていると指摘された。
 丸山氏の発言を補足する形で鹿熊氏は次のように発言された。餌を養殖するとなると新たな産業が産まれ、また新たな問題が出てくるであろう。具体例として、琵琶湖の固有種であるはずのホンモロコが埼玉県で養殖され、佃煮業に卸されているという事例や、養殖された中国産のオオカナダモの自然繁殖、霞ヶ浦でのゼ二タナゴの繁殖、長良川の下流で佃煮が作られている雑魚は実は岡山産であることなどを紹介し、すでに在来魚の養殖は盛んになっていて、固有の遺伝子集団保護の議論はその中では全くされておらず、この小魚の養殖の問題は、非常に重要な問題を内包していることを指摘した。
 ゾーニングには無理があるという立場の発言者C氏からは、どうしてもバスを釣りたいと言う方たちのために我々が懐深く代案を提示するならば、倒産してしまったゴルフ場で、かつ連続水域でないところを利用して管理釣り場を作り、餌となる魚も補給し、入り口と出口を厳重に管理してバスを持ち出せないようにしながら、こういった釣り場でのみバスを釣って良いとする提案が出された。少し茶化しぎみで、ドームにしてみてはいかがかとも発言されていた。
 丸山氏はこの発言を受けて、「こういった釣り場を作ったら釣りに来るか?」という質問を東京水産大学の学生に聞いてみたところ、「そういう釣り場では釣りたく無い」、「小魚も虫もいて緑もある豊かな自然の中で釣りをしたい」と答えた学生が圧倒的に多かったことを報告された。これを聞いて笑うパネリストや会場の方々を遮るように丸山氏は、彼ら若い学生バサ−は決してゲームというだけにとらわれている訳でもないし、バスだけにとらわれているわけでもなく、むしろ我々に共通するような自然知識や感覚も持っていると補足された。続けて丸山氏はバスの拡散と釣りブーム、業界との関係について言及された。バスの放流が始まったのは1970年代前、60年代頃から始まり、それ以前の放流は非常に考えられたものであり、隔離されたな水域のみの放流であった。例えば小さな池で相当大雨が降っても溢れないような震生湖や一碧湖、半島部の小さな水系で逃げ出しても大きな被害のない雄蛇ヶ池。こういった水域のみの生息ならば、それほど大きな問題は起こらなかった。ところがその後ブルーギルが入って来て、この魚を釣魚として位置付けようと釣具業界のキャンペーンが始まり、それが失敗した頃からバスの拡散が始まった。その60年代後半以降、釣りブームが起こり、様々な釣り雑誌も生まれ、今のハチャメチャな魚の扱いが始まったと指摘された。丸山氏はバスやギルの拡散は業界に大きな責任があると言う。こういう業界体質は恐らくなかなか元に戻す事はできないと指摘された。このことが丸山氏が「20年前はゾーニングは可能であると考えていたが、今は無理だと思う」という考えに至った理由だとお話された。また、こういった現状にだれも責任を取ろうとしないことに問題があると強く主張された。「私がバスを放しました」という人が誰も出ない。バスを放した事の無い人が代表で出て来て、「ゾーニングをして密放流を防ぐ」と言っても、何も議論が噛み合わない。こういうあやふやなまま話を進める無責任体質では、問題は解決しないと批判した。
 鹿熊氏はバスを格安に釣ることができるプランがあるとし、自身の主張を繰り広げた。その一つは、バスをドンドン釣っていただいて構わないが、釣ったバスを必ず持ち帰ればそれは捕獲圧を掛けるという意味で駆除に貢献できる。それならば現状維持でもバス釣りが可能である。一日に釣れるバスの数が5匹だったのが、翌年には3匹、次は1匹とだんだん減ってはいくでしょうが、石鯛釣りの方たちは一日に釣れる魚の数が少なくても十分に釣りを楽しまれている。ただ、それにはキャッチ&リリースというものを行わないようにすることが必要で、バサ−の方々にはこれが実行できないことが大きな問題であるとのこと。なぜ自然環境破壊の元凶であるキャッチ&リリースに対し、新興宗教の教典の如く固執するのかが理解できない。琵琶湖は県として駆除の姿勢を固め、実際に動き始めている。釣り人による駆除大会も開催されており、こういった行動にバサ−も参画するべきだと主張された。
 司会の濁川氏は、バスを擁護する側は、どうせバスは根絶できないから「ゾーニング」して利用しよう、根絶できないなら「ゾーニング」にも矛盾はあると自身の考えでも「ゾーニング」を否定した後、琵琶湖の駆除がどのくらい現実的なのか「ゾーニング」に対する考えも含めて意見を中井氏に求めた。
 中井氏は「ゾーニング」ということに関し、バスは芦ノ湖や河口湖などの魚種認定された4つの湖以外は放流してはいけない魚となっていて、現状が少なくともすでに「ゾーニング」された状況である事を指摘し、「ゾーニング」を行う前にやらなくてはならないことがある、つまり今、何が問題でるかというと、いっこうに密放流がおさまらないこと、それはコクチバスの拡散を見れば明らかである。コクチバスは行政も世論も釣具業界もダメと言っている魚であるにも関わらず広がってきている。つまり、これはいくら決めごとを作ってもダメだということを表しているのだと指摘した。どうせバスは根絶できないから「ゾーニング」して利用しようという考えでは、密放流は無くならない。バスがいるという既成事実さえ作ってしまえば、許されるという状況では「入れたもの勝ち」になってしまう。駆除目的のバス釣りしか認めないなどの、釣りそのものに規制をかけないと密放流は無くならないであろう。「バス釣りを公認する水体」、「バスを駆除する水体」だけを考えるのではなく、もう一つ「現状、バスが生息しておらず、今後バスが入るのを防ぐ水体」の合計3つを考え、絶対に密放流を防ぐ体制を整えてこそ初めて「ゾーニング」を論じるべきだと主張された。
 続いて中井氏は、琵琶湖のバス駆除の現実性について意見を述べられた。外来種の対策として重要なのは、もちろん「根絶」ができれることにこしたことは無いが、なぜ外来種が問題なのかを考えた場合、一匹でも多く駆除する事が重要である事は明らかである。一匹でも駆除する努力をする、努力をするなら費用対効果を上げなくてはならないことはもちろんだけれども、根絶できないから手を拱くというのはナンセンスだと考える。釣り人による駆除活動の事例は琵琶湖でも増えていて、その影響を試算してみると、本格的に釣り人が駆除に協力してくれれば、大きな効果が期待できる結果となった。漁師が捕る量にくらべれば見劣りするものの、それでも無視できないくらいの量は十分捕れる可能性がある。
 会場からの発言者D氏により、雑誌などを通しバス釣りのカッコよさを訴え続けるメディアの問題、公園の池で子供達がブルーギルを当たり前の様に釣っている姿を見て違和感を感じ、世論にもっと訴えかけていかなければならない気がするが、対策はなされているかという質問があった。
 これを受けて鹿熊氏は、生物多様性の重要性をどう訴えていくかは、ブラックバス問題が入り口になってくれれば良いと考えており、こういったことを学校教育を通して行って欲しいと考えている。次にメディアの影響については、いわゆる釣り雑誌は釣具業界と一体となっているものであり、雪印事件を例にあげ、企業の倫理性、その企業に属する社員の倫理性を問題にし、正しいことを述べる勇気ある社員が出て欲しいと述べた。
 アユのどぶ釣りをされている発言者A氏は、「肝心な事を言い忘れている」とし、ここで再度発言された。ある釣具量販店チェーンは密放流を過去から繰り返していると指摘し(名誉毀損を懸念し、ここでは名前は明記しません)、これが諸悪の根源であることを、ここではっきりさせるべきだと述べられた。
 これを受けて丸山氏は、釣具業界でこういった方たちの発言力を無くさせることは、今後、非常に重要になると述べられた。それだけでは収まらない。こども達の教育も必要である。この会場のみなさんは笑うが、子供達は真剣に「全ての命は大切だ。バスは殺せない。」と考えている。マングースに対しても同じように考えている。「在来種は大切」だととするならば、バスに対する責任を取って欲しい。それが可能な社会的地位にあるにも関わらず、取るべき責任を取らない人が多すぎると指摘された。今のバス問題も水産行政の問題も、第2次世界大戦後、善かれと思って行われてきたことに対するしわ寄せが、ここにきて出て来ているように思うとお話された。
 会場からの発言者としてE氏は、漁業権魚種認定の条件の一つとして認定魚種の増殖義務があることはすでに理解しているが、放流する事を義務付ける事は記載されていないことを確認された。様々な増殖手段があるけれども、一番有効な増殖手段は放流であると丸山氏から回答を得た後、事はバス問題の根幹は、釣りたい対象魚が釣れなくなったらどこからかその対象魚を持ってくれば良いと言う釣り人の真理に問題があるとし、極端なことを言うと放流事業を一切禁止し、数年後、釣りをしても良い釣り場を釣り人自身が見極めた上で、放流すべき水域を選択することを、是非、行政に提案して欲しいと述べた。
 これに対し中井氏は、「釣り」そのものを見直す時期にきているのではないかと述べた。水の中の生態系のピラミッドに立つ魚を捕る行為だから、釣り人のプレッシャーがあるとたちまち魚が減ってしまう。問題の根本は釣り人が多すぎること。しかもマナー、モラルがなっていない。釣りというものの敷き居が低く、本当に釣りが好きな人だけがやるようにある種コストをかけるようにするとか、そういう見直しを行わなければならないと述べられた。
 多田氏は放流事業に補足して、川の本来の環境を戻してやれば、アユやウグイはかなりの繁殖力で増えてくるであろう事を指摘し、こういった環境整備を行ってから放流すればかなり効果があることを述べられた。
 また丸山氏は釣り人を弁護する形で、次のように述べた。放流を無くす事は素晴らしいことであるが、釣り人の水辺を守る意識を大切にし、管理する一員としての重要性を述べた。
 最後の発言者F氏は、仮にゾーニングを支持するとしたならば本当に限られた場所だけを公認釣り場とし、キャッチ&リリースを禁止して釣ったバスは背骨にまでナイフを入れて殺す、こういうバス釣りなら認めても良いと自身の考えを述べながら、キャッチ&リリース問題について言及された。無私有物を拾って一旦、自己の保有下に置いたのだから、リリースは「放流」と同じ行為であり、違法であるという琵琶湖の漁師戸田氏は指摘されていたが、このように「放流」の解釈を水産庁で改定していただければ非常に良い駆除手段になるのではないかと述べられた。


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