滋賀県リリース禁止条例案へのパブリックコメント

あるソルトウォーター・アングラー団体の代表者の方より、「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例要綱案」パブリックコメントに意見書を提出されると言うことでメールを頂きました。この意見書にはバスアングラーとは違った視点からの「キャッチ&リリース」が書かれており、大変勉強になります。ご本人よりここに掲載させて頂く許可を頂きました。


はじめまして。我々はアマチュアのゲームフィッシング(海のルアー釣り)クラブの代表者です。また、連名のクラブ代表者のなかにはジャパン・ゲームフィッシュ協会(JGFA:一般の方々に馴染みは薄いのですが、全国におよそ6000名の会員を抱える非営利の釣り団体です。)の魚種保護委員を務める者もおります。また、必要であれば各クラブ構成員、および我々クラブと共に活動する仲間たちの住所・氏名等名簿を送らせていただく準備もございます。
我々の釣りクラブは主にスズキを中心に、海のルアーフィッシングを楽しんでおりますが、海の釣りのみならず、ルアーフィッシングを取り巻く環境全般に常に強い関心を持って活動しています。琵琶湖が抱えるブラックバス等外来魚の問題につきましては、昨年の日釣振「ブラックバスを考える公開討論会」シンポジウムより関心を持っておりましたが、遠隔地のために具体的な情報や現実感が乏しく、いま一歩踏み込めないでおりました。しかし、ここにきて、「外来魚の再放流の禁止」という具体的な条例案が浮上し、9月に議会、来年4月に施行予定との話しを聞き、意見書を提出しようと思った次第です。
我々のクラブは、まず「外来魚の再放流の禁止」案は不当であると考えます。明らかに個人の楽しみである趣味としての釣りの枠を行政で一方的に縛り付けるものであり。当条例に反対いたします。
外来魚の再放流の禁止は「キャッチ&リリース」の否定そのものですが、「キャッチ&リリース」は釣り人たちが魚を減らしたくない、という思いから行うものであり、近年ようやく日本に根付きはじめたルアーフィッシング(=ゲームフィッシング)ならではの文化・習慣であります。再放流を行うことによって小さな魚は親魚となり、すでに産卵能力を持つ親魚はそのまま産卵行動に加わることができます。
スズキに関しては釣り上げた魚の標識放流調査によって、再放流の後日、産卵地域への移動が以前から確認されています。
釣り人たちは自分たちの愛する釣りという遊びをいつまでも続けたいという思いから、魚を再放流しており、決して偽善で行っているわけではありません。したがって魚が無尽蔵であれば「キャッチ&リリース」の必要はありません。また、我々は動物保護や環境保護の観点から「キャッチ&リリース」を行っているわけでもありません。釣り人たちは「キャッチ&リリース」を、いつまでも釣りを続けるためのシステムとして捉えており、環境問題や動物愛護とは区別して考えております。不自然な環境政策や様々な要因により魚が減り続ける自然環境のなかで、「キャッチ&リリース」は、釣り人たちが行う、趣味としての釣りを存続させるための自己防衛の手段であります。
もし来年、当条例が施行されたとしても、これを罰する条例がない限り、また仮に罰則が設定されたとしても、これまで通りブラックバスやブルーギルは再放流され続けると予測するのが妥当かと考えます。なぜならば、ブラックバスをルアーフィッシングの対象魚と考える釣り人にとって、ヘラブナ釣り師が魚を持ち帰らないのと同様に、ブラックバス・ブルーギルを家に持ち帰って食べる習慣がないからです。これは芦ノ湖畔のブラックバス定食や、ご承知のブルーギル丼の不人気からも証明されていると考えます。
再放流禁止条例を守る釣り人の立った湖岸には、ブラックバス・ブルーギルの死骸が残り、近くのゴミ箱は魚の腐敗臭を発することになるでしょう。これは教育上好ましくないと考えられます。つまり「外来魚の再放流の禁止」条例の施行後、琵琶湖でルアー釣りを楽しむ釣り人の大半は犯罪者となります。
そこで、琵琶湖の釣り人が犯罪者や迷惑者だらけになることにより、困るのは全国に存在するルアーフィッシングの愛好家たちです。
一般メディアの報道は、国民に「釣り(ルアーフィッシング)=違法の上に成り立つ遊び」という意識を少なからず植え付けることになります。現在、魚を減らしたくないという意識からキャッチ&リリースをする釣り人はブラックバスはもとより、海で、船で、渓流で川で、増え続けています。
近い将来、漁業法では違法とされていた引き釣り(トローリング)が一部で解放されることになります。これは、キャッチ&リリース活動を伴った、大勢のトローリング愛好家たちによる長年の努力による賜物であり、人生の好敵手であるカジキを減らしたくないという釣り人ならでは思いがようやく行政や国民に通じたものと言えます。また、全国のトローリング愛好家に向けてカジキのキャッチ&リリースのマニュアルづくりも精力的に行われています。
同じくスズキを減らしたくないという思いから、毎年、スズキのルアーフィッシングのメッカである神奈川県湘南地区や、全国的にもスズキのルアー釣りがもっとも盛んな地域のひとつである東京湾内において、スズキの「キャッチ&リリース」を啓蒙する旨のイベントが開催されたり、インターネットやモバイルなどのニューメディアを利用した「キャッチ&リリース」を条件とした全国数百名規模の巨大釣り大会なども毎月盛んに開催されております。
さらに、一般市民や環境団体と釣り人との接点の場として主催イベント内で水辺の清掃活動を行ったり、また地域の清掃活動にも参加しています。
こうして釣り人たちの社会的地位の向上、およびルアー釣りのマナーの向上を求めて、様々な活動が行われているなかで、国民に「釣り(ルアーフィッシング=キャッチ&リリース)=違法の上に成り立つ遊び」という認識を持たれることは、我々にとって困惑以外のなにものでもありません。
琵琶湖における「キャッチ&リリース禁止」の影響は計り知れず、琵琶湖でブラックバス釣りを楽しむ釣り人以外の、海、船、川を含めた大勢の釣り人たちの水面下の努力を水泡に帰す恐れがあります。
残念ながら現段階の日本では、釣り人たちの社会的地位は極めて低いと言わざるを得ません。ようやく近年になって、釣り人側からの提案として、魚資源管理を含めたガイドラインづくりのための地盤が固まりつつある時代に、また魚種保護を目的としたバッグリミット(主に海などで釣った魚を持って帰ってもよい尾数)の草案がようやく浮上してきた時代に、たとえ外来魚と言えども「再放流の禁止=キャッチ&リリース禁止」条例は時流に沿っていないと言わざるを得ません。
水産従業者には資金を含めた行政のバックアップがありますが、それに対し我々釣り人は納税者にも関わらず、いまだに法的に非漁民と呼ばれるポジションにとどまり、当然ながら優遇措置やバックボーンは皆無です。行政側もそろそろ、昔と比べて格段の発展と遂げてきた日本のプレジャーフィッシングの現状を認識し、釣り人たちの意見を吸い上げる窓口を解放していく時期ではないかと思います。
我々のクラブのように海のスズキを対象にルアーフィッシングを楽しむ者たちからしてみれば、まず行政が、すでにある法律に基づき、密漁などの違法操業の取り締まりを強化したうえで、次になんらかの規制が釣り人側に出されて然るべきだと考えます。
我々はルアーフィッシングという枠で釣りを考えており、スズキもブラックバスも同義の魚です。行政があくまでも漁業優先でプレジャーは後回しというのであれば、いつまでたっても釣り人側の同意は得られないと考えます。
ブラックバスはすでに日本に移入されて80年近くがたち、一般的にも釣り魚として充分認知された魚ですが、魚食性の習性から目立つ釣り魚であるため、釣りをしない一般の人々にもイメージがつかみやすく、メディアの報道などからも「ほかの魚を食べてしまう悪い魚」というレッテルを貼られてしまいました。この事実そのもが釣り人の地位の低さ、発言力のなさを物語っていますが、ルアーフィッシング愛好家のなかで、ブラックバスに対してそのような認識を持った人はいません。
なぜならルアーフィッシング愛好家のそのほとんどがブラックバスをきっかけにルアー釣りを始めた人たちであり、害魚とは見なしていないからです。
ブラックバスの食害が報道されるなかで、一部地域で激減したとされるタナゴですが、そのタナゴとは国産タナゴの生活圏を奪ったタイリクバラタナゴだったはずです。ご承知のとおりタイリクバラタナゴは外来種です。この単純な事実さえブラックバス食害の報道の影に隠れて一般の国民に認識はされていません。また、教育もされていません。
スーパーマーケットでは姿を偽った魚の切り身が売られ、明らかに危険な魚類に含まれるダイオキシン類の調査や特定には行政の消極的な姿勢が目立ち、そして産地を偽った魚が売られ、消費者のほとんどがそれと気付かずに買い求める現実があります。この現実をつくってしまった行政指導のあやふやさがある限り、水中から鮮魚売り場までの魚を取り巻く環境を一般国民に知らしめることはできないと考えます。
日本の河川は最優先魚種である鮭という1魚種のために大きく変化してきました。それによる自然環境の変化は容認し、食生活と同じく国民生活の大切な側面であるプレジャー生活のための魚種は容認できずというのは、釣りという趣味を一生の華と考えている我々にとってはどうしても納得できないものです。
釣り人とは水辺の人々であります。水辺やその水底の環境の変化・悪化は一般国民よりよく知っているいることもまた事実であり、ほんとうに環境バランスを壊しているのが何なのかを知っています。
歪められた外来魚像、ひいてはルアーフィッシングそのものですが、現実は釣り場にゴミを残す、釣り禁止場所での釣り、迷惑駐車、外来魚の違法放流などの悪徳行為が後をたちません。そのためブラックバスの食害説と釣り人のマナーの悪さの相乗効果でここまで問題が大きくなってしまたのだと考えます。
しかし、マナー違反は明らかに釣り人側の責任であります。そのような一般国民と釣り人とのギャップを埋めるため、そして釣り人のマナー向上のために我々は活動しています。
大正時代の故赤星氏のブラックバス日本移入の際、まっ先に反対したのは琵琶湖の鮎師たちであったと聞いております。
琵琶湖をブラックバス等の外来魚から守ろうとする方々の思いは容易にお察しできますが、淡水域ではタナゴのほかにも琵琶湖産鮎の全国放流による鮎の小型化。それに伴うブラックバスと同じ魚食性のハスの全国への拡散。海水域ではスズキの棲息圏を脅かすタイリクスズキ(ホシスズキ)の繁殖の不安など、外来魚が関わる問題は全国に数多くあります。
今、我々スズキ釣り師の間でなにかと話題に上るタイリクスズキですが、あくまでも行政が漁業(養殖)優先のスタンスを取りつづけるのであれば、将来的には日本固有種であるマルスズキの繁殖にも不安が残ります。韓国の研究機関によれば、タイリクスズキとマルスズキは容易に雑種化するが、かろうじて産卵の適水温の違いにより雑種化を免れている、という研究報告もあり、湖のような閉鎖水域と異なる海水面であるがゆえ、さらなる不安を隠せません。行政が積極的にこれらの外来魚の問題に真剣に取り組み、いままで無視同然であった釣り人たちの意見も積極的に取り入れ、将来のヴィジョンを明らかにすることが先決であると考えます。
そしてブラックバスの問題は琵琶湖だけではありません。
モラルのない密放流は後を立たず、今となって違法放流は低水温域にまで達し、貴重な純血の鱒類の棲息圏までを脅かそうとしています。これこそが釣り人自身を苦しめる要因となることも気付かずにくり返し行われています。
釣り具メーカーや釣りメディアのモラルのないコマーシャリズムにも問題があります。これらの問題をバランスよくクリアしながら、全国的に歩調を合わせ、総合的に、そして根本的な解決の方法を探していくべくだと考えます。
従って、ラージマウスバス類・スモールマウスバス類・ブルーギル類はもちろん。ほかにも淡水域、海水域を含めた全ての外来魚の違法放流に対する罰則の強化や、さらに重い罰則を伴った完全な禁止条例などの立法には全面的に賛同し、また協力もいたします。
また、「県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」(案)のなかで、環境配慮製品の推奨や2サイクルエンジンの禁止等、自然環境に好ましい影響を与えると思われる条例に関しては、全面的に賛成いたしますが、「外来魚の再放流の禁止」案に対しましては上記のような理由から反対いたします。以上、「県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例(外来魚の再放流の禁止)」に対しての意見でした。
駄文ながら、最後までお読みいただきありがとうございました。
なお、文頭で名簿の送付の準備があると申しましたが、その必要、または不必要の如何を、そして、当意見書の活用状況についてのご連絡を頂きたく存じます。
お忙しいとは思いますが、各クラブ構成員ほかへの連絡等とりまとめの都合上、どうかよろしくお願いいたします。


以下はFB's Societyメンバー、小久保の提出した意見書です。

………………………………………………………………………………………

はじめまして。神奈川在住の小久保智之(37歳)と申します。
先月仲間達と「FB's Society バスフィッシングの未来を考える会」という民間団体を設立したばかりです。
今日はいち釣り人としてこの度の要綱に対し意見書を提出させて頂きます。
◆滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例要綱案◆
【第4章 第20 外来魚の再放流の禁止】
 琵琶湖におけるレジャー活動として魚類を採捕する者は、ブルーギル、オオクチバスその他の規則で定める魚類を採捕したときには、これを琵琶湖に放流してはならない。

結論から申しますと、私はこの項目に限り強く反対します。
本年2月14日の「第4回 琵琶湖適正利用懇話会」でキャッチ&リリースにたいする論議が有ったことを存じ上げております。財団法人日本釣振興会滋賀県支部理事、社団法人滋賀県観光連盟理事ほか、それぞれの方々がご自分の立場から意見をされておりました。
しかしこの懇話会の議事録を見ますと、実際にバスフィッシングを趣味にしている人が不在だった様です。
バスフィッシング愛好家は全国に300万人いると言われてます。これだけの人々がレジャーとして親しむバスフィッシングを当事者を無視して話し合いをするのが正しい行政ではないと思います。
環境破壊だからゴルフ場は全て潰しますか?
環境破壊だから自動車の森林への乗り入れは全面禁止にしますか?
環境破壊だからスキー場は全て植林して自然に戻しますか?
このような意見が各愛好家達に通じると思いますか?
同じ事です。現代におけるバスフィッシングも立派なレジャーであり、バスを殺すことはフィールドを失う事と同義です。
「科学的な確実性が不十分であっても、外来生物の規制や撲滅などの影響緩和に対する対処を遅らせてはならない。科学的な、客観的な確実性がないことをもって対応を遅らせてはならない」
このようなご意見が有りました。
現在のような証拠不十分な状態で、生物の生き死にを左右する権利をいつから人は持ったのでしょうか。灰色のものを黒として処置するのは決して正義ではないと思います。

バス駆除派の方々の中には、キャッチ&リリースを基本に持つバスフィッシングを
このように解釈されている方がいます。
・釣りは本来、魚の命を奪う野蛮な行為。しかし血肉にすることでその行為を正当化できる。
・奪った命に対する尊敬と感謝の念があってこそ釣りは許される。
・かつて子供たちは、魚をさばく行為によって魚の鮮度を知り、刃物の使い方を学び、
 原罪意識や人が生き物を利用するという行為の本質を学び、生活力や創造力を養ってきた。
・今の子供たちはC&Rのせいで生き物である魚から「ゲーム攻略方法」以外のことを
 学ばなくなった。C&Rという後腐れ無い釣りは命に最後まで付き合う重荷が無い。

生物を飼育することで命の尊さを学ぶという話なら聞いたことがあります。
釣った魚を全て殺めて、命の尊さを学べるのでしょうか?
「悪いヤツはみんなで虐めろ。殺してしまえ。」
こんな育ち方をする子供が出てこないと誰が言い切れますか?
・水質を向上など水辺の機能を取り戻す事業の負担を利用者に義務づける
・絶対的な保護種がいる水域からバスを排除し、バスを認可した水域への移植を認める
・その活動にバスアングラーを荷担させ、その他の種への知識向上を図る
・違法放流者に対する厳罰
・釣り人のライセンス制度
・民間団体によるビギナー向けスクール etc
前向きな考え方ならいくつでも思いつきます。
そして、バスアングラー達の反対もそれほどなく民主主義的解決ができると思います。
「この魚は悪い魚だから全て殺さなくてはいけない」と、
価値観の未熟な幼児たちの手を血塗れにさせる釣り文化を推進する法案が
明るい未来を作れないと思うのはバス愛好家の欺瞞でしょうか?

今の日本に必要なのは、より多くの人が、自ら与え続けている自然界へのインパクトを
少しずつでもリカバーするための前向きな姿勢だと考えます。
日本の釣りは食の楽しみを主とした「キャッチ&キープ&イート」の歴史です。
しかし環境破壊・地球温暖化が進むに従い大量には釣れなくなってきました。
取った魚を全てキープすればあっという間に資源が枯渇してしまいます。
「明日もまた釣りを楽しむために」釣り人はリリースをします。
昨今、川・湖だけではなく海でさえも明日のためにリリースをします。
そして、もっと魚を増やすために水辺の事を考え、学ぼうとする釣り人が増えています。

今まで私たちの釣り人社会は決して誉められたものではありませんでした。
しかしブームが過ぎ去る中で確実にモラルを改善しようとする釣り人が増えています。
我々の仲間はそのような民間団体を構築しようとしている最中です。
かなりきつい文面となってしまったことをお詫びいたします。
しかし今回の要綱はそう書かせてしまうほど、
我々ゲームフィッシングを愛する者達を憤慨させたことは認識してください。

………………………………………………………………………………………

"The Future of Bassing" presented by FB's Society / since May 21, 2002